高齢者2型糖尿病 血糖コントロールの目標

高齢者糖尿病にSU剤を使う?

高齢者糖尿病にSU剤を使う?

2016年5月、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会による「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が公表されました。しかし、実際の患者さんを目の前にしたときに、血糖コントロール目標をどこに設定すればよいのか、どの薬剤を使い治療を進めればよいのかと迷われる方も多いのではないでしょうか。

目標値の定め方や薬剤選択のポイントをお示ししたいと思います。

ADA(米国糖尿病協会)やIDF(国際糖尿病連合)には遅れていますが、日本でもようやく高齢者の血糖コントロール目標が設定されました。

HbA1cに「下限」が設定されたことは高齢の糖尿病患者に対し、重症低血糖の可能性もある厳しい血糖管理はむしろ認知機能や生命予後の悪化につながりかねないという臨床研究の結果を受けてのもので、高く評価できる点だと捉えています。

日本におけるコントロール目標の特徴は、患者の認知機能とADL(手段的ADLと基本的ADL)によって3つのカテゴリーに分類し、さらに「重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬)」使用の有無と年齢によって、合計7つのカテゴリーに分類していることです。

この目標の特徴は以下の3点です。

(1)血糖コントロール目標は、年齢、認知機能、身体機能(基本的ADLや手段的ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命といった患者の特徴や健康状態を考慮して個別に設定すること。

(2)重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと。

(3)高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としたこと。

つまり、このコントロール目標を使用するには、日本老年医学会の診断基準 2)に従った認知機能とADLの評価と、重症低血糖が危惧される薬剤が使用されているかどうかの確認が重要です。そして、低血糖が危惧されない薬剤を使用すれば、HbA1cの下限はありません。

高齢者でもHbA1cを7%未満にコントロールすることで、心血管イベントや生命予後を改善できる、というエビデンスは現時点ではまだありません。また、いつまでどのくらいの治療を行うべきかという考え方にも様々な意見があることも事実です。

しかし、細小血管障害に関しては血糖コントロールが最も重要であることは確実です。ですから、「重症低血糖のリスクがない薬剤のみ」で治療している患者で、合併症予防を目的にする場合は従来通り7.0%未満という目標は妥当だと考えられます。

この目標値を実臨床で活用する際には注意すべき点があります。この目標値はあくまでコンサンサスに基づく基準であり、エビデンスに基づく基準ではないことです。

日常臨床でしばしば見られるのは、中年期からSU薬を処方し続け、そのままの処方でいつのまにか70代や80代になっているケースです。
こうした患者さんではSU薬の低血糖リスクを考え、他のより安全な薬剤に切り替える必要がありますが、今回の高齢者糖尿病の血糖コントロール目標の発表は、船橋市の糖尿病診療において、高齢者糖尿病に対してより正しい対応をするための良い機会になると思っています。

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